映画「ぼけますから,よろしくおねがいします」

ドキュメンタリー映画「ぼけますから,よろしくお願いします」を観ました(公式サイトはこちら)。
なかなか強烈なタイトルですよね。

上映会場はシニアで満席!

上映会場である横浜社会福祉センターはほぼ満席。観客は,今は元気だけどそう遠くない将来認知症や介護の問題に直面しそうな年代のシニア(ご夫婦・グループ・おひとり)が中心でした。

この映画は,実のひとり娘である信友直子監督が,認知症の87歳の母親とそれを必死に支える95歳の父親の老々介護の日々を追ったドキュメンタリー作品です。

「最近お母さんなんかおかしいねぇ」という状態から,認知症の診断が出て,病状が進行していく中で起こる家族の葛藤がそのまま描かれます。

 

認知症の初期症状

この映画にも出てきますが,認知症の初期ってこういう症状なんですよね。
・買い物に行って何を買うのだったか忘れてしまう。
・同じものを購入してしまう。
・洗濯物をため込む。
・薬を飲んだばかりなのにまた飲んでしまう。

洗濯をしなくちゃと言って,洗濯機の前でゴロリと寝転がってしまうお母さん。お父さんが95歳にして初めて家事をやり,「大儀や」と言いながら買い物に行き,リンゴの皮をむき,料理をし,洗濯をし,裁縫をし・・・と2人の生活を守るため,ものすごく頑張り始めます。

 

認知症の本人と家族の葛藤

娘が「私が仕事を辞めて(東京から)帰ってこようか?」と言うと,「お前は自分の道を進め。自分が動ける間は自分ががんばる」と頑なに言い張るお父さん。このシーンでは会場から「うん…」という同意?溜息?の声があちこちから漏れていました。

終盤,ヘルパーさんが家に来ると聞いて,人が来るのにどうするのか(お客さんを迎える準備をしていない,という意味),と訴えるお母さんに,お父さんと娘が何もしなくていい,と言ったとき,お母さんが「誰も私の言うことを聞いてくれない!」「私はここで邪魔になるんね!」とブチ切れ,「死にたい!」と泣きわめく姿に,いちばん不安で傷ついているのはご本人であることがよく理解できました。

 

認知症でも自分らしく生きることができる社会を

「一人で生きて一人で死ぬと思っていたができない」。
印象的なお父さんのつぶやき。特段の解決方法は提示されないまま,家族の物語はこれからも淡々と続いていく・・・でもこの映画を見た人たちは,それぞれの答えへの何らかの手がかりを見出すのだろうと思います。

「ぼけますから,よろしくお願いします」と言われたときに,「はいはい,分かりました」と笑って答えることができる世の中であってほしいと思います。そういう社会を実現しなくてはならないと改めてこの映画を観て感じさせられました。