ルーツを辿る旅

皆さんは,ご自分の家の家系図を見たり,作ったりしたことがありますか。
私は,20代の頃,ふとしたことから自分のルーツに興味を持って「先祖探し」をやってみたことがあります(我ながら20代でシブいことをやってますね・・・)。

これがなかなか面白い経験でしたので,その方法についてご紹介します。

先祖を調べるには

集めた戸除籍謄本

相続を経験した人は,不動産の名義を変更したり,金融機関の口座を解約したりするのにあたり,「死亡した人の出生から死亡までのすべての戸籍を取得する」ように指示されませんでしたか。
あれと同じです。
先祖を調べるには,自分からさかのぼって順番に戸籍謄本または除籍謄本を取り寄せていく必要があります。
弁護士をしていると,相続人の調査などでよくこの作業をすることがあります。
ひんぱんにやっていると手慣れてはくるのですが,それでもなかなか面倒で地道な作業ではあります。
また,特に昔の人の手書きの戸籍は,字があまりに達筆すぎて判読できないというのは「あるある」です。

それでは,どのようにして戸籍を取り寄せるのか,解説していきます。

①まず,ご自分の戸籍謄本を取る。

まず,ご自分の本籍地の市町村に対し,戸籍謄本(戸籍全部事項証明書)を請求します。
これは,市町村の窓口で請求することもできますし,郵送でも請求できます。

②1つ前の戸籍を取る。

ご結婚されている方は,従前戸籍(以前の戸籍)の記載がありますので,その戸籍謄本または除籍謄本を請求します。

私の場合は,横浜市に対し,筆頭者が父親の名前である戸籍謄本を請求しました。

③そのまた前の戸籍を取る。

従前戸籍には,そのまた前の戸籍が記載されていますので,その戸籍(除籍)謄本を請求します。

私の場合,筆頭者が祖母の名前である横浜市の除籍謄本です。
それを見ると,祖母の一家は昭和40年代に品川区から横浜市に転籍したことになっていたので,次は品川区に対して,除籍謄本を請求します。
これを順番に繰り返していくと,先祖の戸籍を辿ることができます。

※戸籍謄本と除籍謄本の違い

現代の日本では,結婚すると,その人は親の戸籍から抜けて新しい戸籍を作ります。
こうして結婚や死亡で一人ずつ戸籍から抜けていくと,最終的に戸籍に誰もいない状態になり,その戸籍は閉鎖されます。
このような閉鎖・削除された戸籍を「除籍」といい,その写しを除籍謄本といいます。
この除籍簿は、150年(法定保存期間)を過ぎてしまうと、廃棄処分してもよいことになっています。
先祖調査をお考えの方は早めに取得することをおすすめします。

それでは,郵送の場合,どうすれば戸籍謄本を取得できるかを見ていきましょう。

以下の必要書類を封筒に入れ,該当の市町村の戸籍担当課へ郵送します。
・請求書
市町村の戸籍課のホームページには,たいてい請求書の様式が掲載されていますので,それをダウンロードして必要事項を記入します。
・本人確認書類(運転免許証,マイナンバーカードなど住所の記載があるもの)の写し
・手数料分の定額小為替
郵便局で購入することができます。
・返信用封筒(切手を貼ったもの)
・親族関係を確認できる書類(戸籍謄本等)
請求できる方は,必要な戸籍の名欄に記載がある人の配偶者,直系尊属(父母等),直系卑属(子ども等)です。該当の戸籍等に請求者の名前が載っていない場合,親族関係を確認できる書類が必要になります。

自分のルーツを探る

筆者のルーツは霊場恐山のふもとの町にあった・・・。

さて,私のルーツ探しの結果ですが,5代前の江戸時代まで辿ることができました。
4代前の高祖父は天保元年(1830年)生まれです。
そして行き着いた地は,なんと青森県は下北半島の小さな町でした。
現在,青森県に親族はまったくいなかったので,とても驚きました。

さて,私はそこでルーツ探しの旅を終えませんでした。
その後,私はわざわざ青森県に行き,県内の図書館で郷土史料を調べたのです。
そこでは・・・先祖に関する資料をいくつか探し当てることができました。
中でも面白かったのは,地元に伝わるこのようなよく分からない(!)エピソードです。

菊池治五右衛門(5代前の先祖)がお寺に赴いた際,参道にキツネの親子が頭を垂れていたので,妙なことがあると思いながら寺に着くと,和尚が怒っていた。
キツネはお寺が乾かしていたお餅をどこかへ運んでしまったのだ。
和尚は稲荷様に申し上げて,今日から寺の山を追い出していただくと言うのであった。
そこで治五右衛門は途中で見かけたキツネ親子の話をして,許してやってくれと頼んだ。
帰り道,先ほどのキツネが走り出てきて頭を垂れて感謝の意を表した。

なぜこんな話が残っているのかよく分かりませんが(笑)。
しかし,今生きていることの不思議とありがたさを実感したものでした。

青森県内の図書館で集めた史料

皆さんもルーツ探しをしてみると,意外なところに辿り着くかもしれません。
ご興味があれば,ぜひ,やってみていただくことをおすすめします。
親戚などが集まる場に家系図を持っていくと,話が盛り上がりますよ。